No Pain, No Gain

気がつけば不惑、それでも今日も絶賛迷走中。

英語が話せなくてダメダメだったというおはなし

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photo by rene.schaefer

英語を話す事がどうしようもなく苦手。
読んだり聞いたりする分にはある程度理解出来るし、文章を書くのも辞書を引きつつなら何とかなる、様な気がする。
でも、話すとなると、もうからっきしダメ。
 
(えーと、今こういうこと言ってたよな。
てことは、えーと動詞は何だっけ?えーと、えーと?)と考えている間、
僕の口からは「あー...、えー...」とかなさけない呻き声が漏れ出てくる。
 
 
(文法なんてどーでもいい!伝えたい気持ちが大切なんだ!)と自分に言い聞かせ、
しどろもどろになりつつ知ってる単語を羅列するも相手は露骨に「?」という表情。
 
(伝わってない!結構頑張ったのに伝わってない!)としょんぼり。
もうそのまま地面に溶け込んで消えてなくなりたい気持ちになりながら、
「うー...、アイ、キャント、アンダースタンド」とか言って、会話を終わらせる。
 
こんな経験、皆さんありませんか?ないですか、そうですか。
 
 

英語が話せないので、技術でカバーしてみる

さすがに上海という世界でも有数の外国人の集まる都市に住んでいると、
近所に外国人が住んでいるというのも、少なからずある。
実際、我が家の近くにはペドロさん(仮)という中米出身の一家が住んでいる。
 
ペドロさん一家とは子供同士がたまに公園で一緒に遊んだりすることもあり、
顔見知りではあったものの、英語もしくはスペイン語でなければコミュニケーションが取れない。
 
僕はこれまで何度もしどろもどろながらペドロさんとご近所づきあいをしてきたものの、
毎回英語が話せない自己嫌悪感に苛まれることから、
彼らに遭遇すると脊髄反射的に逃げ出したい気持ちで一杯になる。
 
一杯になるのだけれど、そこは子供の手前、コミュニケーションを取っているような雰囲気を装うべく、
"Hi!"とか"Hola!"とか言って、がっちり握手したりするという社交的な振るまいをしなければならない。
何せ大人だから。なりたくてなったわけでもないけど、大人だから。
 
でも、挨拶の後が殆ど続かず、毎回微妙な空気が漂うので、
最近では子供達を見守るフリして、
少しずつ距離を開けていき「会話するには遠い距離」を確保、
その後相手と一定の距離を保ちながらも、
相手の呼吸さえ見逃さずに間合いを取るという高等技術を習得。
こちらが一人だった場合は、急に電話がかかってきたフリをして、
にこやかかつ爽やかに手を振って立ち去ることで、
フレンドリーさと礼儀を欠かさないようにしながら、
こちらの間合いに入れないという技も編み出してみた。
 

ペドロさんとの遭遇したある日のこと

ある日週末有料で開放されているグラウンドで長男とサッカーに興じていると、
ペドロさん一家が愉快な仲間達を引き連れてやってきた。
 
姿が見えた時点で、
(あー、ヤバイ、気がつかなかったフリして逃げたい!)といつものように思うものの、
出口は1箇所しかなく、どう考えても接触は避けられない状況。
しかも、彼は陽気な仲間達を沢山連れてきており、
場合によっては多対1という厳しい戦いを強いられる可能性も高い。
 
もはや迎撃するしかないと、決死の覚悟を決め、頭をフル回転させる。
(えーと、挨拶は「Hi, How are you?」でいいな。
えーと、この間野球チームに入りたいって言ってたな。入れたか聞いてみるか?
「Last time we were talking about baseball team, did you join a baseball team?」とか?)
文法が正しかろうが、何だろうがどうでもよくて、とにかく立ち会いの間を埋めて、
いつもの技で間合いを確保すればいいのだ、とシミュレーションをした上で、
ニコニコの顔を作って、シェイクハンズ!
 
で、早速先程シミュレーションしたフレーズでご挨拶。
僕「やあ、元気?野球チーム入ったの?」
ぺ「いいや」
一生懸命シミュレーションしたものの、たった数秒で弾切れ。
空しい、虚しすぎる。
 
ぺ「なんだ、お前も野球やりたいのか?どこかにチームがあるか知らないか?」
僕「あ、う、ワタシ、ヤキュウ、ヤラナイ。ワカラナイヨ。」
ぺ「そうか、、、残念だな。見つけたら教えてくれよな!」
僕「モ、モチロンデス」
と、それなりに会話が一段落したところを見計らって、間合いを取りにかかり、
決して不自然でない程度のスピードでペドロさんから離れていく。
にこやかな表情は崩さないまま、「長男くーん」とか子供に呼びかけながら。
 
不可侵領域に入り込んだところで息子とサッカー再開。ペドロさん達はバスケ中。
常に相手の位置と向き(いつこちらに向かってくるか分からないので)に注意を払う。
 
(ほどほどの時間が経ったら、ひっそりと"Bye"とか言って帰ろう。そうだそうしよう)
と思ったところで、(ん?帰る時、陽気な仲間達には一言声を掛けるんだろうか?
そもそも何て言うんだろうか?)と不安が募り出す。
 
Google師匠に「陽気な仲間達 帰る時 挨拶」と問いかけるも、
こんな時に限って電波状態が悪いのか師匠はダンマリを決め込む始末。
(ていうか、一言声を掛ける前に、まず挨拶してなかったぞ。
すぐに帰りにくくなるよな。うーんどうしたものか)
(これはもう、あちらが帰るのを待った方が、
無難にこの場を切り抜けられるのかも知れない)などとも考えだし、
全くもって帰るに帰れない。
 
 

そうこうするうちにトラブルに巻き込まれる

しばらくすると、ペドロさん達の輪の中に中国人のおじいさんが近づいてきて、
何か言い合いを始めたようだ。
英語もろくに話せない僕がしゃしゃり出ていくような状況ではないが、
かといって、その混乱に乗じてそそくさと消えるのも人道に悖る気がする。
ということで、視界の端に入れておきながら、引き続きサッカーを継続。
 
と、ペドロさんがおもむろに僕の方に身体を向けて、歩いてくるじゃーないですか。
僕は、僕の後ろに何かいるのかと振り向いてみるも、何もない。
ペドロさんこっちにまっしぐら。
このままじゃ確実に何かに巻き込まれちゃう!でも逃げられない!
 
ぺ「お前は中国語喋れるの?」
僕「多少は話...」
ぺ「ちょっと来て。あのおっさんが何言ってるか教えてくれよ」
と、最後まで答えを聞くまでもなく、僕の手をぐいぐい引っぱるペドロさん。
強引なんだから、もぅ。
 
中国人のおじいさんに事情を聞くと、内容はほぼ全て理解できたものの、
それを英語で伝えようとしても、涸れ井戸も真っ青なほど言葉が全く出てこない!
掘っても掘っても出てこない!
 
ペドロさんと仲間達の(早くこのオヤジが何て言ったか教えてくれ)
という恨めしさの籠もった眼差しと、
おじいさんの(うまいことこいつらに伝えてくれぃ)という助けを求める眼差しとに、
みんなの期待に応えられない自分の能力のなさを申し訳なく存じ上げます、ですます。
 
ふとどこかでこんな気持ちを味わったことがあったなあ、と思い出した。
そうだ、これは小学校からの帰り道にカツアゲされた際、
お金を一銭も持ってなかった時の困惑と、とても似ている。
もういっそカツアゲマンにお金を渡してあげた方が、
僕も解放してもらえてハッピーだし、カツアゲマンもお金が得られてハッピー。
分かっているんだけど、無い袖は振れない。結局僕はカツアゲマンに殴られた。
 
ただ、英語は全く知識が無いわけでもない。たどたどしく英語で伝えてみることにする。
困惑と焦りとで、ところどころ日本語と中国語が交じってしまう。
ひと通り、僕が話し終えた後、ペドロさんは言った。
「あぁっ!?」
英語なのかスペイン語なのかはよく分からない。
ただ、語気には怒りとも驚きともとれる雰囲気が漂っている。
 
その「あぁっ!」は、僕の英語力の拙さに対する「何言ってるかわかんねーよ」なのか?
それとも、もしかすると「神よ!日本人の英語はマジでひどいぜ!話にならんぜ!」
とかいった日本人のレベルに対する絶望か?
いや、しかし、僕は別に日本代表ではないので誤解しないで頂きたい。
僕以外の日本人は捨てたものではありませんよ。
誤解されたのであれば、それは私の真意とかけ離れた物でありまして、
大変遺憾であり、イカンと思います。
という意を込めて、渾身の「あー...、えーと...、そのぅ...」とボソボソ呟いてみた。
が、反応はない。
 
その後、ペドロさんは肩をすくめるポーズをして「みんな帰ろうぜ!」
と言って立ち去っていき、ふと見るとおじいさんの姿もない。
元はといえば、てめーのせいでこんなトラブルに巻き込まれたんだぞ!
「日本人は英語もろくに話せない未開の民族だな!HAHAHAHAHA...」
とか誤解されたらどうしてくれんだよ!
いや、僕が英語を話せないのは事実だけれども。
と、やるせない気持ちで一杯になったけど、
みんな帰ってくれてすっきりしたなあ、というのが正直な感想だったりもする。
 

クールな息子

その一連のやりとりを隣で黙って見ていた長男は、
ぽつりと「あのおじいさん、~~と言っていたね。
○×君のパパには~~~って言えばよかったのかなあ」などとのたまっていたので、
ペドロさんは僕の長男くんにお願いすべきだったのかもしれないな、と心底思う。
残念、ペドロさん。
 
あああああああああああああああ、英語、上達しなきゃ。
 

おまけ:完全なる余談

中学生から大学生まで英語を足かけ10年近く勉強しておきながらこのザマ。
今の英語教育がどうなっているのかわかりませんが、
少なくとも僕の学生時代の英語というのは、
大学に入るための手段でしかなく、コミュニケーションツールの1つを
体得するという本来の目的は蚊帳の外にあった、と強く思います。
10年勉強していても、日本にいるかぎり実際に外国人と会話をする機会が
皆無なのですから、必要性は微塵も感じないわけで、
英語がコミュニケーションツールだということを本当の意味で理解できている
日本人がどれほどいるのか、正直疑問。
(中学校・高校の英語教師達がどれほど英語を使って外国人と流暢に
意思疎通できるのか、是非とも見てみたい)
まあ、だからといって、「日本の教育、問題あり!」と言うつもりは毛頭ないんです。
結局、全て僕の努力不足、意識の低さに起因しているわけですから。
ぼちぼちがんばりまーす。
英語は「インド式」で学べ!

英語は「インド式」で学べ!